★星空日記コリメート風hatena★

2010年開設。星が好きで主に眼視で星空を楽しんでいます。旅とネコも好きです。2022年にteacupブログから引っ越しし、2025年にgooブログから引っ越ししました。記事内リンクを少しずつ修正中。連絡先は下記メアドへ(★を@に)  comet740190ngc★gmail.com

昼間の星を見るため目盛環を改善

 札幌市天文台は1958年(昭和33年)9月に開設され、架台が府中光学製で鏡筒部が東京光学製の口径20cmF12アクロマート屈折望遠鏡1984年8月まで活躍していました。


 上の画像は1984年(昭和59年)10月に更新された2代目の五藤光学研究所製口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡です。2023年現在、この望遠鏡を使い4人の天文台スタッフが日毎の交代で昼間と夜間の天体導入と説明に頑張ってくれています。

 なお、初代の古い口径20cm屈折望遠鏡は再利用可能なようにきちんと分解整理し、札幌市青少年科学館の倉庫にしばらく保管してあったはずですが、北海道教育大学札幌校へ譲渡したと私の後任者から聞いています。

 1984年の望遠鏡更新の際、口径のより大きな反射望遠鏡の導入をという声もありましたが、反射望遠鏡は保守や調整に難があるほかに気流発生の影響を受けやすいことから、以前と同じ屈折望遠鏡にしたいという私の意見が通りました。

 2代目望遠鏡が設置された1980年代ごろから自動導入の望遠鏡が民生機用として普及し始めたようですが、当時は動作がまだ不安定でした。望遠鏡更新時には自動導入機能を省いた費用分を見え味が良いアポクロマート対物レンズへのレベルアップ費用に充てた経緯があります。なお、アポクロマート対物レンズへのレベルアップ費用はかなり高価です。

 2023年になった現在でも、据付型民生向け自動導入天体望遠鏡の不安定さはあまり変わっていないようです。各地の天文普及を目的とした天文台に設置された自動導入天体望遠鏡が突然自動導入できなくなった場面を何度も見てきました。最悪の場合、長期間使用不能となり閉鎖された施設もあるほどです。
 また、自動導入機であるが故に急な天体導入に時間がかかり、手動導入の方が迅速に対応できる場合も多くみられます。


 札幌市天文台の20cm屈折の赤道儀架台の極軸南端には直径275mmの立派な極軸目盛環(赤経目盛環)が付いています。
 手動導入機であれば、目盛環はファインダーで見えない天体を導入する際に活躍します。極軸目盛環の最小目盛は時角の2分(=角度の0.5度)で、バーニヤ(副尺)を使うと時角の10秒(≒0.04度)までルーペを使って読み取れます。

 望遠鏡の仕組みを理解しているスタッフであれば、目盛環を使うと昼間の星も導入できます。札幌市天文台では昼間の公開時間帯に太陽・惑星・明るい恒星をスタッフが導入し説明をしています。天文台スタッフ4人とも極軸目盛環の時角目盛で昼間の星を導入しているとのこと。
 最近は天文アプリで簡単に地方恒星時と導入天体の時角が求められ、恒星時駆動しない極軸目盛環の赤道儀が多いことから赤経目盛で導入するスタッフを見かけなくなりました。



 口径20cmクラスの調整良好な望遠鏡を使えば昼間でも明るい星を簡単に見ることができます。晴れていれば昼間でも、はくちょう座の有名な二重星アルビレオ」の主星(3等級)はもちろんのこと伴星(5等級)も見られます。(私の体験上、口径20cm屈折望遠鏡だと昼間でも透明度がよければ6等級の恒星がギリギリ見られます。)


 ところで、札幌市天文台の極軸目盛環(赤経目盛環)がクランプしても僅かにスリップするようだと天文台スタッフからお聞きしました。
 検証の結果、スリップ現象がほんの僅か発生することを私も確認しました。スリップする最大量は時角目盛の1分=角度にして0.25度ほどのようです。

 スペーサーを介しているとはいえ、クランプを強く締めると目盛環が僅かに回転してしまうことからクランプを強く締められず、クランプが緩いとちょっとしたことでスリップが発生してしまうようです。目盛環を横から押さえる単純なネジ固定方式だと目盛環の偏心が発生することからメーカーではこのような精密構造にしているはずですが、クランプする際の位置合わせ微調整が難しいようです。

 夜間の天体導入時には目盛環にそれほど頼ることがありませんが、目盛環のスリップが少しでもあると昼間の恒星を導入する際、視野内に導入できたとしても視野内をキョロキョロと探すことになります。
 この望遠鏡で最近多用されている接眼鏡は8mm〜24mmのズーム接眼鏡で、低倍率側だと100倍0.5度の視野です。スリップ角度が0.25度もあると視野から外れてしまうかもしれません。できるだけ視野中央に天体導入するためには極軸目盛環のスリップ防止が必要でしょうね。

 1984年の望遠鏡更新を担当した私の責任も感じたことから、目盛環のスリップ防止と目盛環位置の微調整ができる装置を勝手に作り提供することにしました。


 手持ちのアルミ部材で作ってみると、ボルトだらけのスリップ防止装置になってしまいました。メーカー品の目盛環部品に穴あけ加工すればもっとシンプルに作れるのですが、部外者の私が目盛環本体に加工を施すことを避けました。


 12月20(水)に札幌市天文台を訪問し、スタッフの了解を得てからスリップ防止部品の取り付けをさせてもらいました。なお、スリップ防止部品は強力な粘着テープで目盛環の底板に固定しているだけなので、いつでもスリップ防止部品を取り外しできます。
 とりあえず、14時ごろにテレスコープイーストの位置で「こと座のベガ」を導入し、目盛環を調整固定しました。使い心地はどうでしょうか。



 ところで、長年各地の天文普及施設をいくつも見学させてもらった体験から言わせてもらうと、大事なのは望遠鏡や施設といったハード面ではなく、人材育成といったソフト面が最も大事です。人材育成を疎かにした施設の衰退をいくつも見てきました。

 この点、札幌市天文台の古典的な望遠鏡を活かしてくれているのは4人のスタッフの熱意と努力だと私は感じています。これからも親切で丁寧な天文普及業務を担っていただきたいと願っています。